189回例会 (2002.1.5)
会員の皆様方,新年おめでとうございます.本年もどうぞ宜しくお願いいたします.
昨年は暗いニュースが多過ぎました.今年こそは良い年でありますように!と初詣でしっかりとお願いしてきました.会員の皆様は何をお願いしましたのでしょうか?
今日は1月5日.そうです,まだ正月気分も抜けないこの日2002年最初の研究会が開催されました.私の予想では参加される会員の方も少ないだろうと思っていました が予想以上に多くの参加があり驚いたしだいです.これは消化管にかける会員の方々の情熱が2002年度になっても衰えていないということの証ではないでしょうか. さあ,それでは正月ボケの体にむちうって研究会頑張りましょう.
今回の参加者は 53名です
プログラム1 前回第2症例レポートの説明
レポーターの南会員は今回2回目のレポート担当です.
レポートの内容は,2回めで少しは余裕が出来たのでしょうか.それとも井上幹事の鋭い指導の成せるものでしょうか.前回の時よりもよく書けているものと思います.特 にシェーマはかなり頑張ったようです.2回目より3回目,次回も期待しています.
目指せ!最優秀レポート賞.
プログラム2 症例検討 第1症例
田中幹事が担当しました.
今回はいつもとは違う進行をしますということで,病変についての説明が書かれた用紙が配られました.以下の通りです.
下記の番号の中で,今回の症例の読影として適切と思われる番号に○をつけて下さい
- 胃角から幽門前部までの小彎に大きな陥凹性病変が存在し,形,辺縁とも不整.陥凹の周囲に明らかな周堤がみられず,3型の進行癌を疑う.また病変の範囲は胃角 から幽門前部まで,ほとんど全周と思われる.
- 胃角から幽門前部小彎を中心に前後壁にわたり,不整形な浅い陥凹が多発している.幽門部のfold の肥厚もみられ,管腔の狭小化を伴うA.G.Lを疑う.
- 陥凹性病変が胃角から幽門前部小彎に存在するようだが,むしろ胃全体硬化が強くほとんど胃全集に浸潤する4型の進行癌を疑う.
- 胃角から幽門前部小彎を中心に前後壁に広がる陥凹性病変が多発し,辺縁,形とも不整.大彎側のfoldは平滑だが,直線状を呈し4型のスキルス胃癌に比べると柔らかさがみられることからMLを疑う.
症例が提示され,指名された森永会員が読影してゆきました.
胃のバランスが悪く,スキルス,炎症性疾患を疑う.胃上部ではfold がはしご状になっている.胃角は陥凹性病変を疑うがはっきりと写った写真がなく,あるとすればび らん程度だろうとした.次に4型進行癌を疑うならばIIcの原発があるか?として胃体下部後壁小彎寄りに圧迫像,漂流像でも陥凹を示しているとした.
続いて1〜4の回答について当てはめてゆきました.
1,2については病変が胃全体なので否定できる.
3は矛盾しないが,全体の硬さについて典型的ではないが,可能性は大である.
4はMLとしては多発の陥凹性病変がなく,病変の多彩性がない.
以上より3の4型進行癌であるとしました.
次にマクロが提示されました.全体的に縮まったような胃であり.縄目状のfold が密集しており,前庭部から胃角にかけて前後壁に拡がる陥凹があり,この陥凹が原発と思われました.癌は粘膜下層から固有筋層,奨膜下層にかけてほとんど胃全体に浸潤しており,十二指腸にも浸潤しているとのことでした.
この症例は他施設で何回か内視鏡を行い癌が見つかり紹介されてきたそうです.もしもその間に一度でも胃透視を行っておればもっと早く見つけられたのではと思われますがどうでしょうか.
症例写真は <こちら> から.
プログラム3 レクチャー 「胃X線撮影法のQ&A」
吉本幹事が担当しました.
予定では本田会長によるレクチャーでしたが,先月の吉本幹事のレクチャーが途中で終わったということで急遽変更になったということです.
詳しい内容は限定ページを御覧下さい.
プログラム3 第2症例検討
福本幹事が司会を担当しました.
三浦会員と井上(啓)会員が指名されました.
立位,腹臥位充盈像のチェックから始まりました.
三浦会員は胃角と胃体下部大彎線をチェック.井上会員は胃体下部から胃角部の小彎線とその影響であろうとして胃体下部大彎線,さらにその部位の管空が狭い事をチェックしました.
続いて全フィルムが提示され,三浦会員は前庭部後壁小彎よりから小彎を跨いで前壁に至る病変を指摘.大きさは4×3cmでfold 集中があり,隆起を伴った陥凹性病変でIIcであるとしました.井上会員は他に胃角大彎の病変をビランであろうと指摘.
三浦会員の指摘した病変については,確かにfold 集中はあるがIIcとすれば範囲が特定できない.おそらく潰瘍瘢痕であろう.病変としては陥凹ではなく隆起でありIIaであるとし,瘢痕部に癌があるならIIa+IIcといってもよいが,IIcの悪性所見がないとしました.深達度については大部分がMであるがfold 集中部分でSMに浸潤している可能性があるとし,組織型は分化型であるとした.
会場の柏木会員よりfold 集中部分は隆起ではなく,下から盛り上がったものと考えるという意見が出された.小川相談役よりfold 集中部の口側にさらに隆起があり,ビランの多発等の所見が無く否定的ではあるが,悪性リンパ腫も考慮しなければならないとの意見がだされた.さらに小川相談役は.病変はIIaであり.深達度はmであるとした.
会場の意見もそれぞれに分かれましたが.多くの会員は久々の激しい読影バトルに圧倒されたようでした.
最後に司会者より今回はいつになく多くの意見が飛びかったので,下手な司会が目立たなく助かりましたと発言し,新年のスタートにふさわしい例会が終了しました. 詳しくは症例レポートを,結果等は限定ページをご覧下さい.
(福本 弘幸)
症例写真は <こちら> から.