179回例会 (2001.03.03)

<2月  4月>

 日に日に暖かくなって来ました.春の足音も間近に聞こえそうな気がします.
 いよいよ卒業式,入学式のシーズンです.そういえば放射線技師の国家試験が3月1日に行われたようです.昨年まで当病院にいた学生が,沖縄から試験のために1年ぶりにやって来ました.ぜひ合格してほしいものです.試験といえば今回の特別講演は『胃癌検診専門技師認定制度と認定試験』でした.会員の方々の感心も高く多くの人で会場は埋まりました.それでは3月例会のスタートです.
今回の参加者は 105名.


プログラム1 なんでもQ&A!

今月のQ&Aは,先月に引き続き圧迫法が取り上げられました.
 症例は胃角部後壁の未分化型IIc,二重造影像ではわずかな粘膜パターンの乱れとしか表現されませんでしたが,圧迫法を用いることにより見事に陥凹の辺縁が描出されていました.いかに圧迫法の表現能力が優れているかを実感しましたが,これに対して会場からは圧迫の出来ない受検者の場合はどうすればよいのか? と質問がありました.そのような場合は,腹臥位圧迫を行うかバリウムを漂わせた漂流法で補うしかありません.腹臥位圧迫は部位に応じて水平位,半臥位を選択し,呼吸による胃の動きで圧迫の位置や強弱を調整すればよいということでした.
今回をもってこのコーナーは終了させていただきます.長い間ありがとうございました.



プログラム2 前回第2症例レポートの説明

  レポーターの前田監査は久々の登場です.レポートはシェーマも綺麗に描かれており,考察も解りやすくまとめられています.さらに流石と思わせるのは,説明が検討会をなぞるようにされ,前回来られていない人でも良く理解できたと思われます.


プログラム3 症例検討 第1症例

 婦木画像評価委員長が担当しました.
今回は1年間の画像評価のまとめとして行われました.
 テーマは胃体部の前後壁です.井上(啓)画像評価委員が指名されました,区域描出は後壁は撮れているが前壁は体中部,上部は圧迫のようになっているいるために撮られていないとしました.病変は体上部後壁中央に存在し,壁集中(中断)のある陥凹性病変で蚕食像が認められる IIc+III por SM であった.マクロが提示されると後壁の病変だけでなく体上部前壁大彎にも病変(アニサキスによる肉芽)があり写真には描出されていませんでした.もし後壁の病変がなければ,悪性病変であればどうなっていたのでしょうか?改めて全区域を撮影する重要性が問われた症例でした.

症例写真は <こちら> から.


特別講演1 『胃がん検診専門技師認定制度と認定試験』

日本消化器集団検診学会関東甲信越地方会研修委員長
神奈川県労働衛生福祉協会   石渡良徳先生

 今回研究会に来られている会員の方々が一番感心のあるプログラムだと思います.
 説明によれば,認定技師制度については昭和56年から検討され平成12年5月18日に認定されたという事です.その間大変な苦労があったと思いますが,役員の方々の努力の賜物だと思われます.関東では認定試験のために検診学会の会員が343名から600名位に増えたそうです.おそらく関西でもその他の地域でもかなり多くなっていると思われます.それ程認定試験に関心があるためでしょう.それは今回の当研究会の参加者数を見れば明らかだと思います.

 最後に石渡先生が透視について言われた「病変が透視で見えなければ,フィルムに診断可能な写真として写らなければ,それは造影ではなくただの撮影である.」

 造影検査を受ける人は,「写真を撮ってもらえば癌があるかないか解るんですね」と思って受ける.胃癌の発見は最初に手がけた(撮影した)技師の腕で決まる.自分で撮影した写真に責任を持つ.以上の事が非常に印象的でした,私が思うには認定技師とは石渡先生が言われた事が出来る技師の事だと強く思いました.

特別講演2 『胃がん検診の撮影法』(77区域を短時間で描出するには)

日本消化管撮影研究会常任世話人
労働医学研究会 健診中央本部  木村俊雄先生

 スライドによる説明とビデオによる実際の撮影を詳しく説明されました.

 間接撮影では10〜40%の疑陰性があると説明し,間接だからでは許されないと強く力説されました.そのためには,注意力,知識,熱意,執念が必要であるとした.充盈像と二重造影法の比較では,病変描出能は二重造影法が優れている.ルーチン撮影で充盈像を省こうとするには,精度の高い二重造影法が絶対条件であるとのことでした.

 ビデオによる撮影の説明では,胃形によりローリング,シェーキングを駆使しての撮影.前壁撮影,背臥位二重造影第二斜位での頭低位の角度等は,私のルーチン撮影よりもきつく驚きました.次に前庭部の襞集中を伴う病変では圧迫筒を用いて立位から台を倒してゆき,二重造影になった瞬間に撮影するテクニックには感心させられました.私が今まで持っていた間接撮影のイメージが良い方に変わってしまいました.

 また造影剤を流しながらの透視観察の重要性を強調されました.これは撮影枚数に制限のある間接撮影で全区域をカバーするためであるとのことです.最後にプロとして,最高の知識,技術,接遇が必要であるとの意見に,自分自身振り返ってみるとプロと言えるのだろうかと考えさせられました.

 特別講演が二つ続いたために木村先生の時間が短く,かなり急いでの講演となったのが非常に残念でした,機会があればもっとじっくりと聞きたいものです.
 詳しい内容は,ホームページ,まもなく発行の会誌22号を御覧下さい.

講師を囲む回

例会終了後,石渡先生,木村先生を囲む会がライオンズホテルにて開催されました.