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今回の短期集中セミナーで唯一の講義は,奈良県立医科大学腫瘍放射線科の松尾祥弘先生をお迎えし,陥凹性胃癌のX線診断についてお話いただいた.陥凹性胃癌の読影法を基礎から解りやすくご説明いただき,非常に有意義なご講義であったと感じている.以下にその内容をまとめる. 潰瘍性病変における良悪性の鑑別診断 潰瘍性病変における良悪性の鑑別は,陥凹の形や病変の側面像から判断することが基本である. 良性潰瘍:二重造影像において,陥凹の辺縁はスムーズ.周囲の隆起は浮腫によるものであるため,全周に均一な幅のなだらかな立ち上がり(山田I型)をもつ.側面像において,辺縁から外に突出したニッシェ像で,周辺隆起のラインも滑らか. 胃 癌:陥凹の形は不整で,陥凹の辺縁に,にじみやはみ出しの所見が見られる.周囲の隆起も不整でゴツゴツしている.側面像では,内側への隆起の中に陥凹があり,陥凹底は想定される正常の辺縁より内側にある.また,辺縁に急峻な立ち上がりが見られ,正常組織と病変との境界が指摘できる. X線写真で良悪性を正しく鑑別するためには,病変の特徴を熟知し,手術標本や内視鏡像と見比べ,X線像がどのように構成されているかを考えることが重要である. 胃癌と潰瘍 【悪性サイクル】 胃癌と潰瘍は以下のような因果関係がある. 1)潰瘍の癌化は極めて少ない.従って癌と空間的に重なっている潰瘍病変は癌の二次的な潰瘍化によるものであるとみなして誤る率は極めて少ない 2)癌組織は正常粘膜に比べて,びらん・潰瘍化しやすく,その傾向は分化型癌よりも未分化癌において著しい. つまり,陥凹性胃癌は消化性潰瘍を併発している場合が多く,そのような場合,潰瘍は再発・治癒をくり返す(悪性サイクル).従って,潰瘍を発見したら,その辺縁や周辺の粘膜に癌の所見が見られないかを十分に注意して検査を行う必要がある.また,潰瘍の周辺が浮腫などにより細かな読影ができない場合は,潰瘍を治療することによって癌の所見が明瞭になることがあるので,早期癌を疑う場合は潰瘍が治癒するまで診断を先送りにする場合もある. 深達度診断 1)大きさ 病変の大きさは深達度の絶対的な指標にはなり得ないが,相対的な関係は認められているため,良悪性の鑑別の目安になる.例えば隆起型は3cm以下,陥凹型ならば1cm以下の場合に早期癌の確立が高いといわれる. 2)ひだ先端の変化 ひだの集中を伴う病変では集中するひだの先端の所見によって深達度を類推できる.SM以深の病変は粘膜下に癌が潜っているので,fold先端は盛り上がった所見が見られる. M癌:中断,ペン先様の細まり,不規則なやせ SM癌:fold先端のバチ状隆起,融合,結節状隆起 3)管腔の側面変形 管腔の側面変形によって深達度を類推する場合は空気量を変化させて恒常性を確認することが必要である. 無変形 :M 角状変形 :SM>MP 弧状変形 :SM<MP 台形状変形:MP以深 4)撮影法別SM浸潤所見 粘膜像:ひだ先端の太まり,融合 充盈像:大小彎の伸展不良,や陰影欠損 圧迫像:強弱の圧迫で変化が無いか,所見が顕著に現れる このように深達度を類推する要素は幾つかあるが,所見全てを総合的に判断して深達度を読影することが重要である. 組織型(分化度)とX線所見 X線所見と組織型は以下のようにまとめられる. 1)分化型:陥凹底は微細な凹凸で顆粒が見られても比較的平滑である. 病変の境界は不明瞭で棘状のはみ出しがある. 軽度の周辺隆起が見られる. 病変に向かうfoldは,なだらかな痩せや太まりなどの変化が見られる. 2)未分化型:陥凹底は大小不揃いの顆粒を認める. 病変の境界は明瞭で,断崖状である. 病変に向かうfoldは,急激な痩せや,中断の所見が見られる. 以上,陥凹性胃癌の読影についてのご講義を簡単にまとめさせていただいたが,省略している内容も多く,それについてお詫び申し上げたい. 最後に,松尾先生にはご多忙にもかかわらず,陥凹性胃癌の読影について基本的なことから多岐にわたり,貴重なご講義を賜ったことを厚く御礼申し上げたい.
(蓮尾 智之)
(会長 本田 幹雄)
1日目のスナップは
(撮影:寺田和博,吉本勝)